正直な心を大切にしよう(2013/12/1)

正直な心を大切にしよう

 もう年の瀬を迎えましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか?
今年夏の参議院選挙で、何かこれまで期待した民主党政権の3年間がカッコよさそうな議論ばかりで一向に実行に移らず、挙句、大震災での危機管理能力のなさを露呈し、国民が上げ底政権を見抜き、「やっぱり自民党」にと、安定政権に必要な衆参のねじれも解消させる状況となりました。
 昨年秋、自民党の総裁に「安倍晋三」さんが、先に任期途中に体調の都合もあり、職務を投げ出したと批判されながらも、再び「頑張ろう!にっぽん」「たくましい日本を取り戻そう」とのリーダーとして、期待され選ばれ、昨年末の衆議院での自民党の圧勝もうけ、アベノミクスといわれる経済対策が、政権への期待感も相乗効果として、10年余りのデフレ状況を脱するまでの状態になりつつあります。

 こんな事から国民には一定の安心感があるのかもしれないが、消費税が来年4月から8%に上がる、福島第1原発の収束状況やTPPの行方が気にはなりながらも、政局の緊張感もなく、野党の内紛や潰し合いで逆効果的に、自民党1強といわれる状況で推移しています。
ゴタゴタばかりするよりは安定はいいことだ。だが無節操は良くない。やっぱり健全な牽制力は働かせなければならないと私は思います。

 自民党内にあっても数に奢ることなく、正論を戦わせ、目先のお茶濁しをせず、国家の大計を建て直す政治に取り組んで欲しいものです。
そのための姿勢としては、誰に媚びることもなく、国家国民のためにとの大義を起て、正直に務めて欲しい。
後世に範として語り継がれるくらいの倫理観を示す行動をお互いにしようではありませんか!私はこの理念だけは貫きたいと思っている。

 野党も、マスコミも同じだ。いたずらに揚げ足取りにはしり、第3者に利するようなことに結びつけるのは慎もうではないか!国益とは何か!を忘れてはならないだろう。
国民の理解と協力で、みんなでこの国を(国益を)守るために、特定秘密保護法案・憲法改正など、重要な案件は特に慎重に議論を重ね、強行するようなことがあってはならない。

 先月ブラジル・パラグァイ両国へ現地で活躍する、県人会の皆さんとの交流や、視察などをさせていただいた。(詳しくは「議会報告」の項で、内容を報告します)
彼らは現地で生き抜くために、様々な障害を乗り越えて頑張っておられる。「日本人は駄目だと言われないように(評価されないように)頑張っておられる。そうして打ち立てた信頼感(評価)が、子ども達や、孫達の世代にもこの地で生きられる道を拓くことだ。」と皆さん言っておられ、県人会・日本人会の結束や絆を強く感じられた。

 政治家もたくさんいるが、日系の政治家はいろいろなお世話をしても、「金(いわゆるワイロ)を要求する」事もなく、バカ正直だといわれているそうだ。ワイロが当たり前の国にあってもそんなことに毒されない姿勢は貫いて欲しいものだ。そんな道徳観が日本人の評価を創る大きな要素ともなるのだ。
 我われの訪問の道中を、そこここで現地の警察が先導や「護衛」してくれたが、警察さえも日本人には信頼と、友情を持って接してくれているように実感できた。

 つつがないご越年と、ご多幸をお祈りします。

経営は職人芸である

月刊『致知」2013.12月号より引用=ウシオ電機 会長 牛尾治朗

『厳しい現実を経て培われるもの』

 私が経営の世界に足を踏み入れたのは、父親が亡くなり家業の牛尾工業に入社したことがきっかけでした。
5年後不採算であったため切り離された部門を引き受けて立ち上げたのがウシオ電機です。
昭和39年、33歳の時でした。
以来きょうまで約50年。
 この間の経営活動を通じてつくづく実感することは、経営は職人芸であるということです。
前職の銀行マン時代までは、他人様との交流範囲もまだごく限られたものでしたが、経営者になってからは実に様々な人と意思の疎通を図っていく必要がありました。

 工場のあった姫路で仕事をする時には関西弁で会話をする一方、海外から資材を調達するため英語やドイツ語で交渉をする。
工場勤務の10代女性にも分かるように経営ビジョンを示して士気を高めながら、銀行担当者から上手く融資を引き出す。
営業グループと技術グループ、技術グループを融和させ連帯感を高めることで、スピーディーな研究開発を実現し、新たな顧客を開拓したこともありました。

 高度成長という追い風にも恵まれ、おかげさまで当時としては最短の5年で上場を果たすことができましたが、そうした経験を通じて、経営は単に大学で学んだり、ITに詳しいからできるといったものではなく、様々な苦労を重ね、複雑な人間関係の中で培われていく職人芸であることを私は実感しているのです。

 以前読んだ永六輔さんの『職人』(岩波新書)という本には、そんな私の琴線に触れる素朴で率直な職人さんの言葉が数多く紹介されており、深い共感を覚えました。
「〈私もいっぱしの大工になりました〉って威張っている職人がいたけど、〈いっぱし〉というのは、〈いちばんはしっこ〉ということなんだよね。威張って言う台詞(セリフ)じゃない」
「いいかい、仕事は金脈じゃない、人脈だぞ。人脈の中から金脈を探せよ。金脈の何かから人脈を探すなよ」
「職業に貴賤(キセン)はないと思うけど、生き方には貴賤がありますねェ」
「目立たないように生きる――昔はそういう考え方でしたよね。いまは、目立つように生きる、そうなってますわね」
「職人が愛されるっていうんならいいですよ。でも、職人が尊敬されるようになっちゃァ、オシマイですね」
経営者はもとより、誰もが銘記すべき言葉ではないでしょうか。

『松下幸之助氏忘れ得ぬ言葉』

 優れた経営と言うのは、優れた職人芸と、それを支える各人の「人生ノート」、つまり人生哲学によって成り立っていると私は考えています。それらを極めて高いレベルで併せ持っておられたのが、経営の神様と謳われた松下幸之助さんでした。

 父がご縁をいただいていたこともあり、私は松下さんの生前に大変懇意にしていただき、幾度となく対談する機会にも恵まれました。
折しも1ドル=360円から200円へと急速に円高が進み、これから訪れる大変な時代にいかに対処すべきか、というテーマで座談会が行われた際、松下幸之助さんは「コストを30%カットして対応する」との持論を展開されました。
5%カットは難しくとも、30%カットを目指せば”抜本的な改革”が必要となり、それを成すことによって厳しい時代を乗り切る強固な経営体質が養われる、との主張でした。
「そんなことをしたら社員がついてこない」
すぐに反論が上がりましたが、松下さんはこう諭されたのです。
「経営者は社員の前で”血のにじむような努力”を見せなければ駄目ですよ。そうすれば、10人のうち3〜4人はついてくるでしょう。その人たちと一緒にやっていけば十分です」
小学校中退、丁稚奉公を経て会社をつくり、工場に寝泊りして世界の松下を築いてきた人の言葉だけに、私は深い感銘を覚えました。

 これこそ松下さんの人生哲学の神髄であり、職人芸の極致だと思います。
経営が職人芸であることを忘れると、経営の舵取りもおぼつかないものになります。
『職人』には次のような言葉もあります。
「褒められたい、認められたい、そう思い始めたら、仕事がどこか嘘(ウソ)になります」
経営に携わる人に限りません。一人ひとりが人間として真に求められるものを見失うことなく、その時々に応じた技量を真摯に養うことを通じて、この難しい時代を乗り切っていかなければなりません。

誉められたい、認められたい、そう思い始めたら、
仕事がどこか嘘になります