コロナに打ち勝とう!(2020/5/1)

我慢と知恵と協力でこの難局を乗り切り、コロナの終息を目指そう。
この機会に気づいたこれまでの日常生活の在り方の反省点を、今後に生かしましょう。

 世界中では罹患者が300万人を超え、感染が拡大蔓延している新型コロナウイルス対策として、国内でも15000人を超え、国は「非常事態宣言」を発し、大都市圏のみならず全国に規制を求めました。

 正に『非常事態』で国民の生命・健康を脅かすのみならず、経済活動の低迷は私たちの生活の維持やあり方にも大きな影を落としています。今はなにより我慢して、社会の維持を図るため、この見えない敵と自制して戦い、早期の終息を目指さなければなりません。

 これまでの政府の取り組みについても、慎重を期すあまりか、ゴテゴテの感も否めませんが、これも基本的人権を尊重し、個人に強制力を課さない配慮もあってのことであろうと思います。このことも国民がしっかりと受け止め、国の制度・法(憲法)を今後に生かすべく、しっかり改善に取り組まなければならない問題です。

 非常事態宣言を発して約1ケ月、ゴールデンウィーク明けの5月6日を目標に、終息の方向への兆しを見つけ出そうとしていますが、なかなか厳しい見えざる敵との戦いです。今後も手を緩めることなくみんなで各種問題の収束も含め取り組まなければなりません。

 病気との戦いでは、病院の医療形態が崩壊寸前の状態で、コロナどころか一般の診療や手術にも、影響しています。医療関係者の過重な負担軽減や設備の充実にも配慮が必要です。本当に最前線でご苦労いただいている人に、感謝の心が伝わる社会であってほしですね。ましてやあらぬ偏見差別などの風評で、他人を傷つけるようなことがあってはなりません。心優しい感謝の心が、お互いに伝わる人間社会を取り戻しましょう。

 何でも使い捨てが当たり前のような時代に、プラスチックごみ等一部でリサイクルの機運も起こっているのですが、今回は「マスク」の有りようでも考えさせられました。もちろん使い捨ての防塵や感染防止マスクも必要ですが、普段の予防マスクは昔のように布マスクで、洗濯ができるものでよいので、手づくりの工夫も取り組まれました。これも物を大切に使うことを含めて、身の周りの使い捨てを見直す教訓として生かしたいものです。
我が家では絶好の機会と、孫たちに学校が休みなので、自宅でマスクづくりの裁縫体験 や、料理体験をさせました。

 さて社会活動の維持や回復と再開に向け、何より経済的な活動の回復に取り組まなければなりません。雇用の確保のできる経済の立て直しで必要です。国民一律に一人当たり10万円が給付されますが、一人一人の生活維持に使われることはもとよりながら、社会経済活力の回復につながってほしいものです。

 国家予算の1年分に相当する(約GDPの20%)程の予算を組んで、今回の対策に取り組まれるよう政府は力を入れ、日本銀行も国債の発行を無制限に受け入れるとして、不安の払しょくにも配慮してはいますが、いずれ将来に国民が将来負担しなければならない負債となるものであり、命をつなぐ生きた政策であってほしいと思います。それでなくても少子化で国民負担が多くて大変となるのに、国家の破綻につないではなりません。

 コロナの蔓延防止のための休業要請などで事業活動・雇用維持に御腐心され、今後の事業活動維持にも悩まれている方が多いと思いますが、4月30日の国会や県議会で、各種対応の事業予算が補正予算として組まれました。満足できない部分もあるかとは思いますが、追って実態に即した対応ができるよう、制度の充実にも取り組んでまいります。事業継続のための資金などは、取引にある金融機関や、商工会議所・役所の産業関係窓口に是非相談して、取り組んでください。まだわからない方は私にもお声がけください。ともに取り組みましょう。

開けない夜はありません。
みんなで知恵を出し合って頑張りましょう。
今が辛抱と踏ん張りが大切な時です。

和敬静寂

月刊『致知」2020.5月号【巻頭の言葉】より引用 
茶道裏千家第十五代家元 千 玄室

『三十年間ハワイ大学で教鞭』

 日本が米国に敗れて七十五年が経つ。もう一時代前の感だが、占領されていた時に私はCIE(民間情報教育局)の推薦によりパスポートのない占領国民として茶道布教紹介の目的で渡米した。

 一九五一年一月十日にパンナム(パンアメリカン航空のクリッパーで、当時まだ準州であったハワイに第一歩を踏み出し、ハワイ大学に籍を置いた。語学研修である。

 当時、日本からの留学生はほとんどいなかったが、私と一緒のクラスに一人の日本人がいた。作家の山岡荘八先生の息子さんであった。如何なる経緯で来布されていたか詳細は分からない。私は二年間籍を置いたが、本土に渡ったりして単位も取れず休学のまま退学。

 その後、櫻井よしこさんをはじめとする大勢の日本人が留学、卒業されていった。私は卒業できなかったものの、ハワイ大学日本文化センターが単位学科としての茶道を認められたので大学の教授に就任。かれこれ三十年にもなる。

 いまも年に数回は大学で講義をしている。茶道実習のために茶室を寄贈し茶庭もつくり、私のチェアー(講座)も設立した。そんなことで、私は卒業していないにも拘わらず、一九九〇年に故マンスフィールド元駐日大使と一緒に人文学博士号を授与された。

 ハワイ大学の茶室はEWC(イーストウエストセンター)の庭園の一部建立し「寂庵」と命名、茶庭は「清苑」とした。学生以外にも観光客や茶会での来布者が訪れ、時には茶道部の学生が一椀のお茶を差し上げたりして日本文化紹介の一助ともなっている。茶室ができてから三十五年以上になるが、メンテナンスをこまめにしている。

 私の不在中は裏千家ハワイ協会の教授者が指導に当たり、チェアーの講義は全米の大学日本学研究教授の中から選出した先生に米布願い、担当してもらっている。引退したいと思うこともあるが、終身教授とされているので、あの世に行くまで現役教授である。ただし、月給はいただいていない。

『一椀のお茶を通じて心の癒やしと和らぎを得る』

 初めてハワイに来てから約七十年の年月が流れ、いまではすっかり近代都市になった。大学もマノアの本校と共に分校が各島にある。昔のハワイの若者はメインランド(米国本土)に渡り、各名門大学で学ぶことを目標に勉学に勤しんでいただ、いまやハワイ大学も立派な総合大学となっており、反対にメインランドから学びに来る人も多い。

 何しろハワイは狭い土地に多国籍の人々が暮らす。日系人もかつては人口比率として多かったが、いまや五世の時代になっており、他からの移民族も増えている。数多くあった日本企業も最近では減ってきて、滞留日本人も少なくなっている。

 トランプ大統領のアメリカナンバー1の強硬政策で、アメリカが経済で世界をリードしていくためには、いろいろな問題や摩擦がある。茶道は地味であり、プロパガンダしたり報道ニュースになったりすることはない。しかし、いまや外国人が一椀のお茶を通じて、心の癒やしと和らぎの世界を自ら展開していける精神的な学びとして、また新しい茶道学の研究として広まってきている。

 利久大居士の「和敬静寂」のこの四文字の精神と指導思想は、新たなる世界の文明を変化させていくのではなかろうか。

 「和敬静寂」とは、お互いに和を貴び、敬い合い、心身を清らかにし、どのような時にも動じない心をいう。それは、いまを生きる私たちに共通して求められる価値観といえる。その意味においてもハワイ大学の茶道正課はまさに大切な発信基地となっているのである。

 利久大居士の「和敬静寂」のこの四文字の精神と指導思想は、新たなる世界の文明を変化させていくのではなかろうか。