暑い・熱い・篤い(2024.8.1)
暑中お見舞い申し上げます。
梅雨が明けて連日国内各地で真夏日。熱中症や線状降水帯などの自然災害も多発。パリでオリンピック開幕。日本の夏恒例の高校野球甲子園大会。などスポーツ応援にも熱い。お盆には先人の篤行を学び習おう。
猛暑を越えて沸騰化と言われる地球環境で、人の健康に与える影響も熱中症のみならず多様化しているようである。病気に対する抵抗力も弱くなってきていることもあろうが、病の原因となる病原菌の性質の多様化やウイルスも変異しているようでコロナ感染症も5類になったもののまた、まん延が続いているようです。暑くても必要なところではマスク予防も心がけましょう。
温暖化は海水温度の上昇ともなり、魚や海藻(海苔)の生息状況を変化させ、各地の漁場で水揚げされる魚種も様変わりしているそうだ。さらに海上の蒸気は雨を降らせる原因ともなり、気圧の変動も関り「線状降水帯」を形成して集中豪雨となり各地で大災害を引き起こしている。もはや止めようもなくなってしまって、地球に覆いかぶさっていると思われる状況ではないだろうか?どう対応、対策し、復旧の支援の輪をみんなで考え行動しよう。「天罰」とは言いたくない。
7月27日から4年に1度の世界スポーツ祭典オリンピック・パラリンピックが、フランスで開催されている。今回の開会式は競技場のような場ではなく、パリの市街地・歴史的建造物を使って街頭での開催となる画期的手法で感動ものでした。
セーヌ川で船上から選手の入場紹介方法がとられ、観客は両岸から声援を送る方式でした。(ただ紹介国名を違えたり、国旗の掲揚が誤ったりの一部あったようだが・・)メイン会場はエッフェル塔と街路を閉鎖して行われ、ルーブル美術館などを使っての、聖火リレーや気球を使っての聖火台にも度肝を抜かれるなど、開会式伝統の花火や飛行機は使われず、照明がすべて効果的に使われ斬新さが心に強く残りましたね。残念にも雨に降られましたが、雨をもろともせずの運営進行に敬意を抱くものでした。
日本選手のメダル獲得も大いに期待するものですが、人間の能力はどこまで伸びるものなのか努力の成果として新記録が誕生するのも楽しみです。
女子柔道で金メダルが期待された「阿部詩」選手が、2回戦で一瞬のスキを突かれ敗退しメダルに届かなくなり、悔しさで会場に響きわたるほどの大泣きで崩れていたが、逆に観客席から「詩コール」と拍手が沸き起こり、詩選手を激励する場面もあった。こんな感動の場面もスポーツならではの美しい出来事である。
熱い中、日本の夏のスポーツと言えばやはり全国高校野球選手権(甲子園大会)ですね。この野球選手の活躍延長としてプロへの道がありますが、アメリカ大リーグでも今や日本人選手が大活躍であり、「大谷翔平」選手は、世界一の野球選手と誰もが認める選手となっています。これも努力の積み重ねがあってのものであり、1日で出来上がったものではないことを重く評価し、その努力を見習いたいものです。どんな障がいがあってもそれを乗り越える「心・技・体」を磨くスポーツ精神を学びましょう。
今年の甲子園大会への愛媛県予選ではシード校が残らず、ノーシードの我が母校「西条高校」が決勝戦まで勝ち上がり、15年ぶりに甲子園に行けるかと応援したのだが、決勝戦も善戦したがカタリナ高校に敗れた。次は春の選抜大会出場を目指して頑張れ!さらに来年の夏も目指して頑張れ!・・・・
八月はお盆を迎えますが、みんなでご先祖・先人に感謝し、今日私たちの命と魂をつながせていただいていることに感謝の誠を捧げましょう。
みんなそれぞれに命を戴き世のために役割をもって生きています。貴重な役割をもって尽くしてこられ、後世に繋いでこられた方々、悲しくも半ばで世のために命を捧げなければならなかった方々、色々な人生を送られた方々すべてに無駄のない命はなかったのだと感謝し、今を生きる命の尊さをかみしめて、ご英霊に感謝の誠を捧げ、正しい生き方の導きを戴きましょう。
君子、勇有りて義無ければ乱を為す。
小人、勇有りて義無ければ盗を為す。
― 『論語』陽貨第十七―
月刊『致知」2024.8月号【巻頭の言葉】より引用
愛知専門尼僧堂堂頭 青山俊董
~ 日本を絶賛した 偉大なる二人の国際人 ~
台湾が険悪な様相を呈しています。
二〇二四年五月二十日、台湾で頼清徳新総統が就任式に臨み、「中国に隷属せず、憲法を遵守し、誠実に職務を遂行することを誓う」という趣旨の演説を行いました。「一つの中「国」を主張する中国はこれに反発し、人民解放軍を大動員して台湾を包囲する形で大規模演習を実施し、軍事的な威圧を強めました。
渦中の台湾と日本の深い繋がりについて、最近の日本人、特に若い方はあまり馴染みがないかもしれません。
台湾は一八九五年、日清戦争後に締結され下関条約により清国から日本に割譲され、以来一九四五年までの五十年間、日本の統治下にありました。当時の情況について、後世日本人に誠意を持って伝えんとした偉大なる国際人が二人いました。
一人は台湾元総統の李登輝氏。台湾初の総統直接選挙を実施し、民主体制へと移行させ大功労者です。氏は自ら出版した『「武士道」解題』で日本の精神文化を讃えると共に、日本統治時代に触れています。
一九〇一年、『武士道』を刊行して名声を確立していた新渡戸稲造は、台湾総督府の一農政技官として赴任しました。任務は台湾製糖業の振興でした。彼を誘ったのは時の台湾総督・児玉源太郎と、民政局長官の後藤新平でした。当時の新渡戸は健康状態がすぐれず、ポストも一介の技官にすぎませんでしたが、『論語』にある「義を見てせざるは勇なきなり」の如く武士道精神に基づいて身命を賭して働き、数年にして砂糖の生産高を三倍にし、主力産業にしました。新渡戸、児玉、後藤の行政能力や人格の高潔さを讃えている李登輝氏は、日本精神の賛美者であり、生前は日本兵であった兄が眠る靖國神社への参拝にも熱心でした。
いま一人は、台湾を代表する実業家・篤志家の許文龍氏。一九二八年台南市生まれで、奇美実業、奇美博物館の創設者である許氏のことは、日本人にはほとんど知られていません。氏が日本統治に関して、「私はかつて自分が日本人であったことを誇りに思っている」「台湾の基礎のほとんどは日本統治時代に完成したもの」と述べていることを、私たちは心に留めておかねばなりません。
特筆すべきは、許氏が日本統治時代に台湾発展に貢献した日本人十人を自ら選び、彼らの胸像を製作、それぞれ縁の地に設置してそ顕彰に尽くしたことです。
十人の名は、後藤新平、新渡戸稲造、八田與一、羽鳥又男、浜野弥四郎、新井耕吉郎、鳥居信平、松本幹一郎、磯永吉、末永仁。各々の素晴らしい業績を辿っていただければ、李登輝氏と許文龍氏が我が国を高く評価する所をご理解いただけると思います。
~ 組織の上に立つ者にとって 最も大切なこと ~
さて、冒頭で台湾を巡る不穏な現況に触れましたが、これは二〇二二年二月のロシア軍によるウクライナ侵攻直前の様相に酷似しているとも言えます。演習に終わると思われたものが一転、侵攻となり、短期決着と考えたロシアの思惑が外れ、二年以上経っても悲惨な状況が続いています。ウクライナが一日も早く平穏を取り戻すこと、そして台湾で同様の悲劇が起こらないことを祈るばかりです。
中国の話題でもう一つ。中華人民共和国は世界中の大学に出資、提携して 「孔子学院」なるものを設立しています。二〇二〇年時点百六十二か国・地域に五百四十も設立されていることが確認されています。表向きは中国の伝統文化、中国語の教育機関を謳っていますが、カナダ、アメリカ等はこれらを情報プロパガンダ機関として閉鎖を進めています日本にも十三の大学に設置されていますが、同様の疑念、警戒感が出てきています。
これは当然と言えるでしょう。中国共産党は文化大革命時(一九六六~一九七七)の権力闘争で「批林批孔」を掲げ、林彪と孔子の思想を批判、敵視してきたにも拘らず「孔子「学院」とは、義とは程遠い擬態ではないかと疑いの目を向けられるのは無理もありません。
ここで、表題にまつわる孔子とその弟子・子路の問答の拙訳を記したいと思います。
子路が孔子に尋ねた。「組織の上に立つ者にとって、最も大切なこと、それは勇(力、権力、軍事力)の行使だと思いますが、いかがでしょうか」。孔子は答える。「なるほど。しかし上に立つ者にとっては、勇より義が大切だ。勇ましいことばかり重んじて義を蔑ろにすると、往々にして動乱、反乱 戦乱を招くことになる。また、下っ端が勇のみを行使し義がない場合には、これはもう盗人だよ」
子路は周知の通り、孔門十哲の一人です。武勇に優れた人で、孔子にその純朴な性格を愛されましたが、後年、衛の大夫になりながらその内乱に巻き込まれて落命しています。
世界の政治家やリーダーたちも、義を何より重視すべきだと私は切に思います。 勇が先立つばかりに反乱、 動乱を招いてはならないし、ましてや盗人になってしまっては後世のもの笑いの種です。果たしてプーチン大統領、ネタニヤフ首相、習近平主席は、義の人になれるでしょうか。その行方を見守ると共に、私たち自身も義の人となるべく精進を重ねていきたいものです。
上に立つ者にとっては、勇より義が大切だ。勇ましいことばかり重んじて義を蔑ろにすると、往々にして動乱、反乱 戦乱を招くことになる。