安全・安心・安定が大事!(2015/9/1)
国会での平和安全保障関連法案の審議も大詰め、中国経済の行方で世界経済も注視が必要、安倍政権の真価が問われると同時に日本国の真価も問われる時だ。
暑い夏が過ぎ、実りの秋を迎える。
国会では平和・安全保障関連法案が審議されているのだが、平和を守るため、国際との協調や相互信頼を高めるための貢献姿勢を示すことが大事だ、との理念で提案の説明をしているのに、あくまで戦争する国へ向かう元をつくるものだと、どこまで行っても入口で議論の深まりがないので、国民にとっても判りにくいことになってしまっている。はっきり憲法改正の条文審議が提案されたほうが、判りやすかったのかも知れない。
最後は数だと強行することなく自民党安倍政権は、国民にもっと説明する責任もあろう。その他の国会議員はこの国を守るために私はどうするのだということをはっきりと示すべきだ。国民の命・国益を守るため極めて大事な法の整備だからこそ、慎重に取り組んでほしい。
台風など自然災害も同じだ。何時どんな状況の変化で安全だと思っていても、ゲリラ豪雨、暴風竜巻、地震津波、がけ崩れ、土地の陥没、火山の爆発・・・、長年の経験則に加えて、データの分析能力の高まりで、想定できることにはできる限り対策を立て、被害を最小限にとどめるための備えをしておくことが必要なのだ。
なんでも反対で事が収まればよいが、私たちの快適な生活を守るためには、自己の負担も負う責任を果たす必要があろう。そうすれば自ずと最大公約数の道を見つけ出すことも必要だということが判ってくるのではなかろうか?
ただ自分の力だけではどうにもならないことも世の習いだ。安倍政権もアベノミクスとの経済安定政策を打ってきたのだが、ここへきて、その大方の成果と真価が問われようとしたのだが、中国の経済政策の混乱、ギリシャ問題を中心としてEUの足並みの乱れなど国際情勢が怪しく、株価が低迷し新しく経済政策を立て直しが求められなければならない状況に来たのかなとも思う。
資源がなく輸入に頼り、製品を輸出して国民の生活を支える富を生み出さなければならない日本の国の宿命として、外国と協調・連携はもっとも意を払うべき事柄だ。
しっかりと自己をわきまえ、世界の動きに注視を最も払わなければならない時だろう。
さて、原子力発電のことであるが、先に九州電力川内原発が規制庁の審査をへて、去る8月に、再稼働運転に入った。伊方原子力発電所でもすでに規制庁の審査を終え、住民説明や安全点検中である。いずれ再稼働の可否について結論を出す時期が迫ってきている。世界一の厳しい安全基準をクリアーしたと言え、絶対に安全確保の手を抜いてはいけない。伊方の稼働に関し大分県が万一の避難先として受け入れを協力する姿勢が出されていることは、とにかく反対の中にあって、寛容の精神を大いに評価したい。
9月にはこれらのことも踏まえた議論が愛媛県議会でもなされることだろう。
名聞利欲
月刊『致知」2015.9月号より引用 牛尾 治朗( ウシオ電機 会長 )
『名利を思わざるも武士にあらず』
初代社長の市村清さんとは、ウシオ電機を創業した当初から大変深いご縁を賜っていましたが、舘林さんとも実に気が合い、親交を重ねていました。私より二回り以上も年長でしたが、「経営者としては君のほうが十年先輩だから、ぜひいろいろ教えてほしい」と、謙虚で飾らない人柄印象的でした。
禅に造詣の深かった舘林さんから学んだことはたくさんありますが、その一つに「名聞利欲」(みょうもんりよく)という言葉があります。これは『葉隠』の次の一説にもとづく館林さんの造語です。
「 名利を思うは武士にあらず
名利を思わざるも武士にあらず 」
(名利、つまり自分の名声や地位だけを求めるのは武士の本分に反することで、実に嘆かわしいことだけれども、しかし、全く立身出世を求めない人も武士としては同じように嘆かわしい。)
名利を求めて汲々とする人を戒めたるため、ともすると前段にばかりスポットが当たりがちです。確かに名利を求めて上にごまをすったり、権謀術策に弄することは好ましくありません。しかし自分の地位を上げることは、それによってより大きな仕事ができるようになり、より大きな社会貢献に通ずるわけですから、本来は大変意義のあることなのです。
にもかかわらず昨今は、出世という言葉があまり好ましくないもののように曲解される傾向があるのが気掛かりです。
館林さんは、名利を求める上で大事なことは、その地位を得るのに相応しい実力を常日頃から養っておくことであり、上司の顔色をうかがったり、おべっかを言うのではなく、正々堂々と実力を蓄えて出世してほしいと説かれています。
『民は之に由らしむべし之を知らしむべからず』
私は、舘林さんの説かれる実力の基本は、人徳、徳の力であると考えます。
人徳の重要性については、安岡正篤先生から『論語』の一説を引いて説いていただいたことがあります。
「 民は之に由らしむべし之を知らしむべからず 」
(民は徳によって信頼させることはできるが、すべての民に真実を知らせることは難しい)
リーダーがどんなに努力しても、自分の思いや考えのすべてを部下に伝えることは出来ない。それを補うのは徳であり、リーダーは部下に信頼される人徳を養わなければならないとのことでした。
これは、館林さんの説かれる名利の求め方にも通ずる教えといいましょう。私はお二人の教えに深く感じ入り、今日まで指針としてきました。
日本の未来のためにも、「名聞利欲」という言葉とともに、人徳を養うことの大切さが広く認識され、社会の力となる志の高い人物が輩出することを私は願ってやみません。